「市場の失敗」によって、環境問題や社会問題が起きるとされています。本記事は、そんな市場の失敗について、わかりやすく説明します。
市場のおかげでみんなが幸せになる
市場(しじょう)という言葉をご存じでしょうか。
市場とは、財・サービスが取引されて価格が決定される場あるいは機構をいう。市場という概念は多様に用いられ、その種類も多い。 (後略)
日本大百科全書(ニッポニカ)
なにやら難しそうですが、重要なのは、市場があると何がいいの?市場がないとどうして困るの?という部分です。

上の図を見てください。飲み物を持っているAさん と、お金を持っているBさんがいます。Bさんは飲み物が100円でも欲しいと思っていますが、Aさんは全く価値を感じていません(0円と思っています)。
さあ、ここで出番なのが市場(しじょう)です。
市場はこんなことを思います。
よし、Bさんの50円とAさんの飲み物を交換しよう!
市場とは、このように何かを交換(取引)してくれるものです。
そして、この市場の働きにより、私たちは自分の幸せを追い求めれば、社会全体にとっても幸せな結果となります。
先ほどの例では、Bさんからすると、自分が幸せを追い求めた結果にもかかわらず、Aさんも幸せにしているのです。
個人もハッピー、その結果社会全体もハッピー。これが市場の機能です。この機能がしっかり働いている状態は、「市場が財やサービスを適切に配分している状態」と呼ばれます。
Aさん | Bさん | 社会全体 | |
利益 | 50円 | 50円 | 100円 |
市場が失敗すると、社会全体が不幸せになる
けれども、市場も間違えることがあります。たとえば、次の例を考えてみましょう。

飲み物を欲しい人がもう一人でてきました。この人も100円なら飲み物を買っていいと考えています。
そこで、飲み物を1本もっていたAさんは、もう1本用意することを考えました。実は、Aさんの家の近くにある裏山では、水がタダでとれるのです。
さて、またもや市場が働きます。
その結果、飲み物を持っていたAさんには100円が、お金を持っていた2人には飲み物が渡されました。
しかし、実はこの裏で、Dさんがとても大きい被害を受けていたのです。Dさんは、裏山で毎日キノコ狩りをしていました。しかし、Aさんが水をとった結果、山がの生態系が変わってしまい、キノコ狩りができなくなってしまったのです!
市場の働きの結果、Dさん以外の3人は小さな幸せを手にしましたが、Dさんはそれを上回る被害を受けてしまいました。
このように、個人が自分の幸せを求めた結果、社会全体としては最適な幸せが受けられないことを、市場の失敗といいます。この状態は、「市場による財やサービスの配分が適切でない状態」と呼ばれます。
Aさん | Bさん | Cさん | Dさん | 社会全体 | |
利益 | 100円 | 50円 | 50円 | -1万円 | マイナス |
どういうときに市場が失敗するのか??
さて、どうして市場は失敗してしまったのでしょうか?市場が失敗する理由は、大きくわけて4つあるといわれています。ここでは概要だけ説明しますので、気になる方は調べて見てください。
外部性
さきほどの例が、外部性が理由の場合です。この「外部」とは、「市場の外部」を意味します。たとえば、裏山でとれる水も、裏山でとれるキノコも、みんなが勝手にとっていいので、そこに市場はありません。
このほかにも、公害問題などが例として挙げられます。
誰か1人が車を運転してで排気ガスをだしたとき、それによって苦しむ人間がいたとします。しかし、その排気ガスは、市場で取引されません。苦しむ人間に勝手に届いてしまいます。
公共財
もう一つが、公共財の場合です。たとえば、道路などが公共財に当たります。
私たちが普段使っているキレイな道路は、税金を払っている人や、毎日自分の家の前の道路を掃除してくれている人たちによって成り立っています。
しかし、税金を払わなくても、掃除をしなくても、キレイな道路は使うことができます。
このような性質のものを市場にまかせると、ここでも間違いが起きてしまいます。
独占
独占は、みなさんもわかりやすい例かもしれません。
たとえば、この世からハンバーガーショップが1つを除いてなくなったとしましょう。
いままではたくさんお店があったため、お店側も努力して安い価格でハンバーガーを売っていました。
しかし、敵がいなくなったので、ハンバーガー屋さんはおいしいハンバーガーを作る努力もせず、値段を上げてきました。消費者である私たちは、ハンバーガーを食べるのに仕方なくその金額を払っています。
このような場合も、社会全体としては幸せな状態ではありません。
そして、実際に独占による市場の失敗が起きないために存在しているのが、「独占禁止法」ですね。
情報の非対称性
情報の非対称性とは、市場の参加者が持っている情報が、人によって異なることを表します。
たとえば、Aさんが売ろうとしている飲み物には、毒が入っていました。しかし、この事実はAさんだけしか知りません。BさんやCさんは、飲める水かと思い買ってしまいます。
このような状態のときにも、市場は失敗してしまいます。
まとめ
市場の働きにより、私たちが自分の幸せを追い求めれば、社会全体にとっても幸せな結果となります。しかし、いくつかの条件の下では、市場は失敗してしまいます。そして、市場が失敗すると、社会全体に悪影響が及んでしまいます。
今回は市場が失敗する理由は概要にとどめましたが、この理由を知ることで、市場の失敗をどう回避するか?の答えにもつながります。気になる方は是非調べてみてください。